各社の専門性について
一口で翻訳会社と言っても、各社さまざまな違いがあります。ここでは、大きな分類として2つの系統をご紹介します。
一方は、どんな翻訳にも基本的に対応するというスタンスの会社です。他方は、明確な専門分野を持ち、その専門に合う翻訳だけを扱う会社です。前者が中心に据えているのは「翻訳」そのものであるのに対し、後者は「専門性」を中心に据えているという点で、違いがあります。
前者の場合、ネックになるのは品質管理の部分です。同じ翻訳でも、分野によって必要となる知識やスキルに違いがあるため、あらゆる分野の翻訳に浅く広く対応するということだと、どうしても手薄になる部分が出てきます。
対象となる文書について知識のない人が翻訳したりチェックしたりということが時折起こるため、その分野の専門家が見るとまったく不自然な文章が出来上がるというケースも少なくありません。
一方、後者の場合は、特定の分野で実績を積み重ねていくため、その分野に関しては他社にない強みを持ち、それがお客様に対してアピールする部分となります。そのため、その分野にぴったり合う業種のクライアントにとっては非常に強力なパートナーとなり得ます。
ですが、翻訳会社の側から見ると、その業界の景気動向などから大きな影響を受けてしまうということが大きな課題となります。
数年前、リーマンショックの時期には、自動車分野の翻訳の需要は激減しました。自動車産業は長年にわたり国内の産業において中心的な役割を果たしてきたため、多くの翻訳会社がこの業種を業務の中心に据えていました。ですので、たいへんな苦境に陥った会社も多くありました。
業界ごとの浮き沈みによって、ほかにも同様のことが起きています。
翻訳会社が扱っているのは基本的に翻訳という単一の商品ですので、経営的なリスクヘッジのために、いろいろな分野の翻訳を手掛けたいと思うのは自然なことですし、そうしない限り狭い市場の中で一定の仕事量を確保するのが難しいということも言えます。
ですので、多くの翻訳会社が、どんな内容でも引き受けるというスタンスを取っています。
発注サイドから見た注意点
ですが、立場を変えて、作業を発注する側からすると、これは注意が必要な点となります。翻訳会社であればどんな翻訳でも普通にできると考えると、うまくいかないケースが出てきます。
明確な専門性を謳っている会社でなくても、各社とも、十分な実績を持つ得意分野とそうでない不得意分野がありますので、それをよく見極めて各社の得意分野に合う作業を依頼したほうが、間違いなく良いものが仕上がってきます。
でも、不得意分野にあたる仕事の場合は、あまりその分野の経験がない翻訳者に何とかやってもらったり、場合によってはあわてて翻訳者を探すという方法を取らざるを得ません。これは言うまでもなく、品質面で非常にリスクの高いやり方です。
ですから、「餅は餅屋」という言葉のとおり、できる限りその分野に関する専門性の高い会社に依頼することをお勧めします。法律、特許、医薬、IT・コンピュータ、金融などの分野では、複数の翻訳会社がその分野を専門としています。
あるいは、特に専門性を謳っていない会社でも、得意分野と不得意分野はあるはずですので、それを事前にしっかり確認してから、それに合う作業を依頼するのがよいでしょう。
特定の分野に関する具体的な実績が知りたいと言えば、営業秘密に類する情報を除き、できるだけの情報を教えてくれるはずですので、見積をご依頼になる時点で十分な確認を取ることをお勧めします。その手間を惜しまなければ、後でひどい翻訳に悩まされるという事態に至ることもないはずです。
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