用語集
DTP
DTPとは、デスクトップパブリッシングの略で、コンピュータの専用ソフトを使ってページレイアウトの編集を行うことです。多くの場合、翻訳だけではただのテキストデータですので、きちんとレイアウトされた体裁のよい文書の形にするためにDTPという工程が必要になります。
DTPソフトとして一般的なものには、InDesign、FrameMaker、QuarkXpressなどがあります。MS WordもDTPソフトとして使用されます。これらのファイル形式でファイルを支給すれば、そのままのレイアウトを生かして翻訳を行うことができますので、DTPという工程を省く(あるいは簡略化する)こともできます。
MLV
Multi Language Vender(マルチランゲージベンダー)の略。主にソフトウェアのローカリゼーションの分野で、多言語の翻訳を同時に行うことを専門とする会社のことです。場合によっては数十の言語へのローカライズを同時に進めることもあります。
SLV
Single Language Vender(シングルランゲージベンダー)の略。MLVに対し、主に単一の言語を扱う会社のことです。日本国内の会社の場合、日本語から英語、英語から日本語を主に扱う会社のことを指します。
Trados
「トラドス」と発音。翻訳メモリ(TM)ツールの業界標準として世界中で使われています。現在はSDL社が開発・販売しています。2011年現在の最新版は「SDL Trados Studio 2011」ですが、業界で一番普及しているのは「SDL Trados 2007」というバージョンです。
上書き(うわがき)翻訳
顧客から支給された原文データに直接文字を入力しながら原文を訳文に置き換えていく翻訳方法のこと。原文のレイアウトをそのまま流用できるため、DTPにかかる費用を削減し、納期を短縮することができるという利点があります。
解析
翻訳メモリの用語で、対象文書を既存の翻訳メモリと比較して、どの程度一致しているかを調べる機能のこと。原文ファイル中のワード数(あるいは文字数)がマッチ率ごとに分類され、それぞれのカウント結果が示されます。実務的には、この解析結果を元にして翻訳量を算出し、納期の決定がなされます。
完全一致
原文の分節が翻訳メモリ内の分節と完全に一致することを示す。「100%マッチ」とも言う。
クエリー
翻訳者から翻訳会社、または翻訳会社からお客様に対する問合せ内容のこと。翻訳の方針に関することや、専門用語の訳し方の確認などが含まれます。件数が多い場合はExcel等のファイルにまとめて送付することも多いです。
繰り返し
翻訳メモリの用語で、翻訳対象の文書中で2回以上出現する分節(=センテンス)のこと。「レペティション(英語の”Repetitions”に由来)」とも表記される。文書中で、初めて文書内に出現した分節は完全一致(100%マッチ)、あいまい一致(ファジーマッチ)、または一致なし(ノーマッチ)のいずれかとみなされるが、同じ分節が次に出現したときは、繰り返しと認識されます。
グロッサリ
「用語集」を参照。
コーディネータ
翻訳会社の中で工程管理や品質管理を行う立場の社員のこと。翻訳会社に作業を依頼すると、最初は営業スタッフが対応するケースが多いと思いますが、実際に案件が進行する段階になると窓口がコーディネータに移ります。
コーディネータは、翻訳者やチェッカーの手配から、スケジュールの調整、簡単なチェックまで、一連の作業の流れをすべて一元的に管理します。ですから、翻訳の仕上がりは、コーディネータの能力に左右されるケースが多いと言えます。コーディネータとの良いコミュニケーションが、満足のいく翻訳を仕上げるためのカギとなります。
最近では、特にローカリゼーションの分野では、コーディネータのことを「プロジェクトマネージャ」と呼ぶことが増えています。
誤訳
翻訳の誤りのこと。翻訳の品質を考える上で、これをどう回避するかがポイントになります。原因はさまざまですが、単語の意味の取り違いや、原語の文法的な構文の理解が不足していることなどが主な原因です。
差分
以前の版からの変更部分のこと。実務翻訳においては、元々ある原稿の一部を変更し、変更箇所の翻訳だけを行うというケースも多くあります。その場合の変更箇所を差分といい、差分のみの翻訳を行うことを差分翻訳といいます。翻訳メモリツールを使用すると、差分の処理が効率的に行えます。
自動翻訳(機械翻訳)
コンピュータのソフトを使って自動で翻訳をする仕組みのことです。「google翻訳」など、Web上で無料で利用できるものもあります。日本語の場合、ちょっとした文章の意味を知りたい場合などには有効ですが、きちんとした翻訳が欲しい場合にはまだまだ使い物にならないというのが一般的な見方です。
ただし、IT分野などでは一部導入が進んでいて、機械翻訳の後に人の手を加える(ポストエディットと言います)ことで、一定の品質に仕上げるということがなされています。
スタイルガイド
翻訳を行ううえで従うべき規約をまとめた文書。たとえば、文体として「です・ます体」と「である体」のどちらを使うかや、カッコの使い方などから、特定の単語を漢字で表記するかカナで表記するか、送り仮名の付け方など、かなり細かい内容も含まれます。IT・コンピュータ分野などでは、クライアント企業の各社が異なるスタイルガイドを用意し、その内容を細かく適用することが求められます。
タイポ
「typographical error」の略で、キーの打ち間違い、変換ミス、綴り(つづり)ミスなどをさす。
多言語翻訳
英語から日本語、日本語から英語などの単一言語間の翻訳ではなく、日本語や英語から複数の言語への翻訳を同時に行うという形態の作業の進め方。IT・ソフトウェア分野や、金融分野などで、同じ内容の文書を複数の言語で同時に用意する必要があるような場合に、この形態が取られます。場合によっては数十の言語を同時に進めることもあります。
チェッカー
翻訳のチェックをする人のこと。多くの翻訳会社では、翻訳者が作業を行なった後に、専門のチェッカーがチェックを行う工程を設けています。第三者のチェックを入れることで、翻訳者の思い込みによるミスを防ぐことができますので、品質管理のための重要な工程といえます。
テープ起こし
音声データから文字を起こすこと。音声データしかないものを翻訳したいという場合に、翻訳の前作業として行われます。たとえば、英語で行われるセミナーや講演会の内容を翻訳して、日本語で出版するケースなどがあります。
※詳しくは「テープ起こし(反訳)」もご参照ください。
トライアル
翻訳のテストのこと。翻訳会社が翻訳者を採用するかどうかを決める際に、翻訳者の実力を評価するため、少量の翻訳をやってもらって、その出来不出来によって合否判断をするということがあります。
また、クライアント企業が、複数の翻訳会社の中から発注先を決める際に、同様のテストを実施して翻訳会社の翻訳品質や対応を評価するということも行われます。これも、トライアルと呼ばれます。
ネイティブチェック
訳された言語のネイティブスピーカーがチェックをすること。たとえば日本語から英語への翻訳を行う場合に、英語ネイティブの目で見て英語の訳文に違和感がないかをチェックするという作業をするケースが多くあります。
ネイティブでない翻訳者が作業する場合には、どうしてもネイティブからみて不自然な翻訳になってしまうことが多いので、自然な訳文に仕上げたい場合には必須の工程といえます。
ファジーマッチ
翻訳メモリで、原文の分節が翻訳メモリ内の翻訳に一部だけ一致する(完全一致ではない)ことを示す。日本語では「あいまい一致」と言う。たとえば、Tradosでは、ファジーマッチは「95% – 99%」「85% – 94%」「75% – 84%」「50% – 74%」の4種類に区分されます。
翻訳者
翻訳を職業として行う人のこと。文芸翻訳などの場合は、翻訳家とも言われます。翻訳会社の社員として翻訳の仕事をしている人もいますが、多くはフリーランスの立場で翻訳会社に登録する形で、翻訳会社から仕事を請け負って作業を行います。
実務翻訳の場合、翻訳そのものの専門家というより、対象の専門分野で経験を積んでから、その分野の翻訳者になるというケースが多いと言えます。たとえば、特許事務所で特許出願の実務を扱っていた人が特許翻訳者として独立したり、医薬品メーカーに勤務していた人が医薬分野の翻訳者になったりというような例です。
※ 詳しくは「翻訳者ってどんな人?」もご参照ください。
マッチ率
翻訳メモリで原文ファイルの解析を行なった際に、分節(=センテンス)単位で翻訳メモリ中の分節との一致の度合を示した数字。たとえば、Tradosでは、マッチ率は「100%」「95% – 99%」「85% – 94%」「75% – 84%」「50% – 74%」「No Match」の6種類に区分されます。
訳抜け
原文の一部が翻訳されずにそのまま残ってしまうこと。誤訳と並んで、翻訳の品質上の重要な問題とされます。
用語集
翻訳に必要な用語をまとめたもの。基本的な品質管理のための手段として重要視されます。多くの場合、原語と訳語の対応を示す一覧表の形になっています。
ローカリゼーション(ローカライゼーション)
日本語にすると「現地化」です。主にIT(特にソフトウェア)の翻訳に関連した用語として、一般的に用いられています。ただの翻訳ではなく、その表示のされ方や機能にまで踏み込んで調整を行うことです。
たとえば、ソフトウェアの画面に表示される文字列を英語から日本語に翻訳する際に、英語と日本語ではフレーズの長さが異なるので、うまく表示されるようにソフトウェアの調整を行う必要があります。
また、現地の文化や習慣に合わせてソフトウェアなどの機能を改良することも含まれます。たとえば、海外で開発された会計のソフトウェアを日本で使えるようにするためには、日本円での計算ができるようにしたり、日本の税制に合わせて計算の方法を変えたりすることが必要です。そのためにソフトウェアの機能を変更するのもローカリゼーションの一部です。
ワード数
翻訳の見積の基準となる数字。英語(や欧米言語など)の単語の数のこと。多くの翻訳会社では、1ワードあたりの単価が決まっており、それに全体のワード数を掛け合わせた形で費用の計算がなされます。
日本語から他の言語に翻訳する場合は、日本語の「文字数」が基準になり、それに日本語1文字あたりの単価を掛け合わせて費用の計算がなされます。